toggle
2019-06-04

沖縄三線と奄美三線

沖縄三線と奄美三線

南西諸島、琉球諸島などと呼ばれる琉球の島々には、大きく別けて二つの三線の種類があることを知っている方は、琉球民謡に詳しい方だと思います。

かっての琉球王国時代に、同じ琉球国の支配下にあった島々に二つの三線があるという不思議、今回はそんなお話を中心に、沖縄と奄美大島の三線を紹介します。

沖縄と奄美の三線

アダンの木

沖縄と奄美の三線、結論から書いてしまうと、同じ奄美諸島の徳之島を境に、沖縄三線と奄美三線と呼ばれる二つの三線に別けられます。

徳之島から南は沖永良部島、与論島、沖縄本島と続くわけですが、沖永良部以南の三線と奄美諸島の三線は色んな部分が違っています。

もちろん、三線が違えば唄が違ってきます。

沖縄から奄美へ伝わった唄、奄美から沖縄へ伝わった唄というのも沢山存在し、唄も三線も「まったくの別物」と言うのは無理があると今は思っていますが、音色や唄い方など、やっぱり二つの流れの三線があると言うのは一般的な話になっています。

考えて見れば、琉球諸島は1000キロにも及ぶ島々からなります。

1000キロと言えば、本州で言えば宮弦会関西支部のある大阪から直線距離で測ったら北海道まで軽く到達してしまうという話ですから、たった二つしか無いんだ、という話だとも言えるでしょう。

大阪から北海道までの間の音楽文化を眺めれば、一体幾つの民謡が存在するか?ということですね。

糸の違い

沖縄絃と奄美絃

三線の糸、絃、方言ではチルなどと呼ばれます。

ひと目見て、沖縄・奄美の両三線のはっきりとした違いが分かるのが、使用される糸が違うということです。

白い糸が沖縄絃、黄色い糸が奄美絃です。奄美弦は「大島」「大島ヂル」などとも呼ばれ、高い音で唄い演奏される奄美三線の絃は細く高い音が鳴る黄色い糸が使われます。

何故色が違うのか?はどうやら意味は特にないらしく、ひと目見て違いが分かる様にという話ではないか?みたいなことを聞きました。

とは言え、理由はまったくないというワケでもない話も時折耳にします。

三線の糸は、沖縄・奄美ともに元々は絹糸が使われていた訳で、江戸時代から日本の絹をとるマユは黄色が多かったという話です。内地からの民謡と共に黄色の糸が伝わったと言うのは「ある」かもしれません。

また、今も昔も奄美一番の繁華街である屋仁川では、盛んに演奏されていたのは奄美三線ではなく内地の三味線だったそうで、その三味線の絃が黄色だったという説。

奄美と沖縄の絃をはっきり分ける為に、奄美弦は黄色になった説。

本当の所はわかりませんが、どれもこれも真実味を帯びた話だと思います。

沖縄では今でも時折絹糸が張られた三線の演奏会などがあるそうですが、沖縄・奄美三線ともに、今ではテトロン製の糸が一般的です。

市販されている奄美の糸は、一種類しか無い感じですが、白い沖縄絃には、実は太さが幾つかあって、一般的には2号絃が張られますが、1.5号、1号と番数が小さくなるほど太い絃というのも存在して、琉球古典をやる方々が好んで使っているそうです。

ちなみに、宮弦会の会員の中にも、1.5号を使う方が何名かいらっしゃいますが、結構入手するのが困難だとの話は耳にします。(三線工房きよむらにはあります)

爪の違い

沖縄爪 奄美バチ

沖縄三線では、絃を自分の爪を使ったり、専用の爪を利用して弾きます。

対して、奄美三線では、爪ではなくバチという呼び方をして、細長く削ったしなりのある竹を始めとする様々な素材で絃を弾きます。

結構、奏法にも違いがあって、奄美三線では、胴や絃がバチにて叩かれる音も良しとする民謡です。

奄美の民謡は、日本本土の南限だと言われます。内地の三線も似たようなバチさばきをするので、沖縄の爪、奄美バチの違いはそのあたりにあるんじゃないかと思っています。

バチの語源を見ると、絃を弾く、打つ、と言う意味が書かれています。太鼓のバチは打つという意味で、これもまた関連があるだろうと想像できます。

三味線バチ

ちなみに、内地の三線のバチっていうのはこういう物です。

沖縄の爪、奄美のバチ、素材も形も様々で、10人の奏者がおれば、十人十色です。宮弦会のメンバーも、色んな爪を使っているので、またの機会にじっくりと取材して紹介したいと思います。

本革と人工皮

本皮と人工皮

左側の三線が美しいニシキヘビの皮が張られた、沖縄の三線です。対して右側の奄美三線は人工皮が張られています。

三線を初めて見る方だと、見分けもつかないかもしれませんが、沖縄三線を既に持っている人にとったら、本皮張りは上等三線、人工皮は入門用。

そんなイメージが大きいかと思いますが、奄美三線には、ほとんどと言って良いぐらいに、人工皮が張られます。

上の画像、両三線とも、三線工房きよむらさんで作って貰った三線なのですが、三線の型は違うものの縞黒檀を使った上等三線です。

よく言われるのが、奄美の三線はその奏法から、本皮だと持たないという説明が良くされますが、最近は決してそれだけでは無いなと思う様になりました。

奄美三線は高い張りのある音が求められるために、皮を強く張る必要があります。奄美三線に求められる仕事が出来る職人さんが居ないと言うのも理由の一つなのは間違いないでしょう。

実際に、本場であるはずの奄美大島で、三線を一から作り上げる工房など、ほとんど存在しません。沖縄から仕入れして絃を張り替えただけで奄美三線を名乗ってる三線など酷いもんです。

三線のメンテナンスを依頼しようにもしようがない、そんな現状だと、皮の張替えなどのメンテナンスがほぼ必要のない、人工皮が良いに決まってるという話です。

実際に、私は20年ほど前に奄美大島の有名三線店で奄美三線を購入しましたが、メンテナンスを依頼すれば、新しい三線を勧められる、びっくりするぐらい時間がかかる。

他にも色々ありますが散々な話を耳にします。

近々、本皮の奄美三線を作って見ようと思っています。私らの側には、腕の良い三線工房がありますから。

形の違い

沖縄の三線には、代表的な型に真壁(マカビ)、与那城(ユナグシク)など大きく別けて7つの型が存在します。

奄美の三線は、既に書いた通りに、沖縄から仕入れた三線が売られているので、同じく真壁が圧倒的に多いのが現状ですが、ほんの一昔前は奄美には奄美の職人が作った、独特な形の三線が幾つも有りました。

奄美でも盛んに三線が作られていた頃の三線が、爺さんの形見だなどと言ってメンテナンスに持ち込まれたりするのを見るのは少なくないです。

奄美の三線職人が居なくなってしまった今、沖縄三線と奄美三線の型の違いと言うのは、残念ながら無くなってしまいました。

勘所の違い

三線の違いと言う話ではありませんが、沖縄と奄美の三線は、押さえる場所、勘所が違います。

これがもう、先に書いたとおりの奄美の民謡が本土の民謡の南限と呼ばれる所以で、琉球音階との違いが勘所の違いとなって現れるということですね。

ところが、まるっきり違うという話でもなく、奄美にも琉球音階の勘所を使う唄があったりもするのが南の島の民謡の面白いところです。

まとめ

ハイビスカス

沖縄三線と奄美三線、幾つかの違いを紹介しました。

琉球民謡の島々を旅して、色んな唄と出会い「○○だそうだ」という話は私の中で確信も持った実体験となり、より唄を知ることが出来たということに繋がります。

どちらかと言うと、購入できる三線店も少なく、マイナーな存在の奄美三線ですが、琉球民謡の方々にも、是非、奄美の三線、そして唄を知って欲しいと思います。

南の島の唄と暮らしは密接に繋がって、今の世の中に受け継がれて来ました。

情報で溢れているグローバルな今の世の中で、小さな島だけの唄など、既に歴史の中に埋もれてしまった唄も数え切れません。

奄美の民謡だけに限らず、南の島に足を運べば、思いもよらぬ出会いがあるものです。

それは必ず、皆さんがより深く琉球民謡を知ることに繋がります。私自身も時間が許す限り、島々への旅を続けて行こうと思っています。

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です